コールセンターがAIでなくなるかどうかを、今の時点で断定できる根拠はない。ただ、現在のAIの使われ方を見ると、起きているのは「なくなる」ことよりも役割の分担が変わることである。営業時間や手続きの案内のような定型の問い合わせはAIが受け、料金の細かい条件や例外の扱い、苦情対応のような判断が必要な応対は人が担う。オペレーターは、AIが用意した承認済みの回答を確かめながら、判断と配慮が必要な応対に時間を使う形に変わっていく。
本記事では、コールセンターの業務を「AIに任せやすいもの」と「人が担うもの」に分ける考え方、オペレーターと現場の責任者(SV)の役割の変化、AIを取り入れる段階と効果の測り方を解説する。
この記事の要点
コールセンターはAIでなくなるのか
「AIがオペレーターの仕事を代替する」という見方がある一方で、コールセンターに届く問い合わせのすべてが、決まった答えで返せるものではない。お客様の事情によって案内が変わる相談、規程にない例外、感情に配慮が必要な応対は、引き続き人が受ける領域である。
実際に、chai+を実運用しているコールセンター・BPOの業種では、ECサイトの24時間の問い合わせ対応や商品情報の問い合わせで、892件のうち858件にAIが回答した(回答率96%)。一方で、同じ事例記事では、苦情対応や与信判断のような個別の判断が中心の応対や、法令・契約上必ず人が行うべき手続きは「慎重に検討したいケース」として挙げている。AIが受け持てる範囲は広がっているが、その外側に人が担う仕事が残る、というのが現時点で言えることである。
出典:chai+公開情報(業種別の実運用データ)。詳しくはコールセンター・BPOの導入事例を参照。
AIに任せやすい業務・人が担う業務
判断の基準は、「答えが決まっているか」と「その場の判断や配慮が要るか」である。コールセンターでよくある業務を分けると、次のようになる。
| 業務 | 主な担い手 | 理由 |
|---|---|---|
| 営業時間・手続きの方法の案内 | AI | 答えが決まっていて、くり返し聞かれる |
| 注文確認・配送状況の照会・返品の受付 | AI | 手順が決まっていて、件数が多い |
| 予約の受付・変更・キャンセル | AI | 夜間・休日にも受け付けたい |
| 料金の細かい条件や例外の扱いの案内 | 人(AIで確かめる) | お客様の状況を聞き取ったうえで、承認済みの回答を確かめて案内する |
| 苦情対応・与信判断など個別の判断 | 人 | その場の判断と、相手への配慮が必要 |
| 法令・契約上、人が行うべき手続き | 人 | 人が行う決まりになっている |
ポイントは、真ん中の「人が案内し、AIで確かめる」領域である。ここはAIに丸ごと任せるのではなく、オペレーターが承認済みの回答をその場で引けるようにすると、案内の正しさをそろえながら、保留にして調べる時間を減らせる。
AIを取り入れたあとの、オペレーターとSVの役割
問い合わせの流れに沿って見ると、AIと人の役割分担は次のようになる。
| オペレーター:覚えて答えるから、確かめて案内し判断するへ
料金や手続きの細かい条件をすべて覚えるのではなく、応対中に承認済みの回答を引いて確かめながら案内する。新人研修でも、細かい条件の暗記より、FAQの引き方を練習しておき、応対の流れや本人確認の手順、SVに引き継ぐ基準のような、その場で調べられないことに時間を使える。定型の問い合わせがAIに移る分、オペレーターが受ける応対は、判断や配慮が必要なものの割合が高くなる。
| SV:呼ばれて答えるから、回答を承認し足りない情報を決めるへ
答えが決まっている質問でSVが呼ばれる回数が減る代わりに、AIが用意する回答の内容を確認・承認する役割が加わる。オペレーターがよく探しているのに回答が用意されていない言葉や、AIから人へ引き継がれた理由を見て、次に足すべき情報を決めるのもSVの仕事になる。
コールセンターにAIを取り入れる4つの段階
一度にすべての窓口をAIに切り替える必要はない。次の順に、段階を踏んで進める。
| 段階1:問い合わせを分類する
直近の応対記録を、内容ごとに分けて件数の多い順に並べる。それぞれが「答えが決まっている定型の問い合わせ」か「判断が必要な問い合わせ」かを、上の表を使って分けておく。
| 段階2:定型の問い合わせをAIに任せる
件数が多く答えが決まっている問い合わせから、Webのチャットや電話の一次対応をAIに任せる。最初から全チャネルに入れず、課題の大きいチャネル、件数の多い内容から始めて広げていく。AIで答えられない問い合わせは、人へ引き継ぐ流れを用意しておく。
| 段階3:オペレーターの応対を支える
人が受ける応対では、オペレーターが通話中にキーワードを入れ、SVが承認した回答をその場で引けるようにする。お客様向けに公開する回答と、例外の扱いやSVに引き継ぐ基準のような担当者向けの回答は、分けて管理する。
| 段階4:数字で確かめ、役割を見直す
次の章の指標で導入の前後を比べ、AIが受け持つ範囲と、オペレーター・SVの役割を見直す。
効果の測り方
通話システムや研修の記録など、すでにある数字で確かめられる。導入前の1か月と導入後の1か月を、同じ方法で比べる。
| 指標 | 測る場所 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 平均処理時間(AHT) | 通話システムの記録 | 案内に迷う時間が減ると短くなる |
| 保留の回数と長さ | 通話システムの記録 | 確かめるための保留が減っているか |
| SVへの確認・引き継ぎの件数 | SVの対応記録 | 答えが決まっている質問での呼び出しが減っているか |
| 一人で応対を始めるまでの期間 | 研修の記録 | 次の期の新人と比べる |
| よく探される言葉 | FAQボットの問い合わせログ | よく探されているのに回答がない内容を見つけ、次に足す回答を決める |
AIが答えた件数だけで判断せず、AIの回答が正しかったかもあわせて確かめる。回答の確かめ方は「RAG・AIチャットボットの回答精度が低い原因と改善方法」で解説している。
AIに任せるときの注意点
AIで答えられない問い合わせを、人へ引き継ぐ流れを必ず用意する。引き継ぐときに、それまでのやり取りの内容を担当者へ渡せれば、お客様が同じ説明をくり返さずに済む。また、AIが答える内容は、SVなど権限を持つ人が確認したものに限ると、案内の正しさをそろえやすい。顧客の個人情報を扱う窓口では、使うサービスが入力した内容をAIの学習に使わないかも確認しておく。
オペレーターの負担という点では、電話でのカスタマーハラスメントへの対策も課題になっている。AIを使った対策は「電話のカスハラ対策とは?」で解説している。
chai+でコールセンターの役割分担をつくる
chai+は、デフィデ株式会社が提供する法人向けのAIサービスである。本記事で紹介した役割分担に沿って、次のしくみを組み合わせられる。
- 人が受ける前:AIボイスボットが、営業時間や手続きの案内のような定型の問い合わせを電話で受け付ける。FAQの範囲外の問い合わせは有人のオペレーターへ引き継ぎ、転送時に通話内容の要約を渡す工夫もできる
- 人が受けている間:オペレーター向けのFAQボットで、応対マニュアルや過去の応対記録からAIがQ&Aを書き起こし、SVや品質管理の担当者が承認したものだけを担当者の画面に表示する。キーワードを入れて候補の質問を選ぶと、承認済みの回答がそのまま表示されるため、お客様と話しながら確かめられる
- 公開範囲:Q&Aを1件ずつ、お客様向けか担当者向けかを分けて管理できる
- データの扱い:入力したキーワードや登録した応対マニュアル・応対記録は、AIの学習に使わず、ほかの用途にも回さない。FAQボットに入力するのはキーワードだけで、お客様の氏名や契約番号は不要
オペレーター向けのFAQボットは、FAQ自動生成を含むUltra版・Enterprise版で利用できる。運営するデフィデ株式会社は、ISO/IEC 27001(ISMS)とJIS Q 15001(プライバシーマーク)の認証を受けている。
まとめ:コールセンターは「AIと人の分担」で変わる
コールセンターがAIでなくなると断定できる根拠はなく、現在起きているのは役割分担の変化である。定型の案内や受付はAIに任せ、判断や配慮が必要な応対は人が担う。オペレーターは承認済みの回答を確かめながら案内し、SVは回答を承認して足りない情報を決める。問い合わせの分類から始め、一部の定型業務、応対の支援へと段階的に取り入れ、保留やSVへの確認、新人の独り立ちまでの期間などで効果を確かめていくことが大切である。
chai+の機能と導入の流れは、資料ダウンロードページから確認できる。
コールセンターとAIに関するよくある質問
Q. コールセンターはAIでなくなりますか?
A. なくなると断定できる根拠はありません。現在起きているのは、定型の問い合わせをAIが受け、判断や配慮が必要な応対を人が担うという役割分担の変化です。苦情対応や与信判断のような個別の判断、法令・契約上人が行うべき手続きは、引き続き人が担う領域です。
Q. コールセンターのどの業務をAIに任せられますか?
A. 営業時間や手続きの案内、注文確認や配送状況の照会、返品の受付、予約の受付・変更のように、答えや手順が決まっていて件数の多い問い合わせが向いています。料金の細かい条件や例外の扱いは、オペレーターが承認済みの回答を確かめながら案内する形が向いています。
Q. AIを入れると、オペレーターの仕事はどう変わりますか?
A. 細かい条件をすべて覚えて答える働き方から、応対中に承認済みの回答を確かめて案内し、判断や配慮が必要な応対に時間を使う働き方に変わります。新人研修では、応対の流れや本人確認の手順、SVに引き継ぐ基準など、その場で調べられないことに時間を使えます。
Q. AIはコールセンターでどのくらいの問い合わせに答えられますか?
A. 問い合わせの内容と、登録した資料の整備状況によって変わります。chai+のコールセンター・BPOの業種では、ECサイトの24時間の問い合わせ対応などで、892件のうち858件にAIが回答しました(回答率96%)。
Q. AIボイスボットとオペレーター向けのFAQボットは、どう使い分けますか?
A. 電話の一次対応はAIボイスボット、人が受けたあとの応対はFAQボットが受け持ちます。営業時間や手続きの案内のような定型の問い合わせはボイスボットが受け付け、判断が必要な問い合わせを受けた担当者が、FAQボットで案内の内容を確かめます。
Q. AIを取り入れた効果は、どう測ればよいですか?
A. 平均処理時間、保留の回数と長さ、SVへの確認・引き継ぎの件数、新人が一人で応対を始めるまでの期間、よく探される言葉などを、導入前の1か月と導入後の1か月で同じ方法で比べます。
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提供:デフィデ株式会社|戦略AIコンサルティング