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特許で読み解くAI検索技術 「トリプル検索」とは?RAGの誤回答を減らす3段階ハイブリッド検索のしくみ

作成者: chai+広報部|Aug 28, 2026, 5:13:28 AM

― 特許第7851525号(デフィデ株式会社)で読み解く、ベクトル検索・キーワード検索・セマンティックランキングの役割


 「AIチャットボットに聞いたら、それらしい答えは返ってきたけれど、実は間違っていた」。RAG(検索拡張生成)を導入した多くの現場が、この“もっともらしい誤回答”に悩まされています。


この記事では、デフィデ株式会社が取得した特許第7851525号「質問文に対して文書を検索して回答するプログラム、回答装置及び方法」を一次情報として、AIチャット&検索サービス「chai+(チャイプラス)」にも実装されているトリプル検索(3段階ハイブリッド検索)のしくみを、専門外の方にもわかるように解説します。

 

RAGの誤回答がなぜ起きにくくなるのか、その理由を技術の中身から読み解きます。

 

この記事の要点(3行まとめ)
① トリプル検索とは、「ベクトル検索」「キーワード検索」「セマンティックランキング」の3段階を組み合わせて、質問に本当に関連する文書だけを絞り込む検索方式。
② 3段階で候補を精査するため取りこぼしと的外れが減り、さらに関連度が低いときは無理に答えず質問を問い直すため、誤回答(ハルシネーション)が起きにくい。
③ 回答の根拠となった文書のページ画像を該当箇所ハイライト付きで提示できるため「AIの回答は本当に正しいのか」を人が確認できる。

 

 

トリプル検索とは?

 

 トリプル検索とは、ユーザーの質問に対して社内文書などの中から回答の根拠を探し出すときに、性質の異なる3つの検索を順番に重ねて精度を高める検索方式です。

 

特許第7851525号では、この処理を担う仕組みが図面上で明確に「トリプル検索のチャンク検索部」と名付けられています。


具体的には、① 意味の近さで探す埋込ベクトル検索、② 言葉の一致で探すキーワード検索、③ 両者の候補を意味的な関連度で並べ直すセマンティックランキング、という3段階です。

 

1つの検索方式だけでは拾いきれない情報を補い合うことで、「意味は近いが的外れ」「言葉は一致するが文脈が違う」といった誤りを減らします。

 

 

 

 

 

そもそもRAG・対話型AIとは?なぜ“もっともらしい誤回答”が生まれるのか

 

RAG・チャットボット・対話型AIの基礎

 

RAG(Retrieval Augmented Generation/検索拡張生成)とは、大量の文書をあらかじめ細かい単位(チャンク)に分割してデータベース化しておき、質問が来たら関連する部分を検索してから、その内容をもとに生成AIが回答文を作る技術です。

 

学習済みの知識だけで答える従来の生成AIと違い、社内マニュアルや最新資料など「外部の正しいデータ」に基づいて答えられるのが特長です。

 

チャットボットや対話型AIとは、自然言語でユーザーの質問を理解し、適切な回答や情報を返すシステムを指します。

 

Webサイトやアプリに組み込まれ、時間帯を問わず対応できるため、カスタマーサポートのコスト削減や顧客満足度の向上に活用されています(特許明細書の背景技術より)。

 

 

RAGの弱点:回答は返るが「根拠」と「精度」に課題が残る

 

便利なRAGですが、特許明細書は従来技術の課題を次のように指摘しています。

 

すなわち、チャットボットやRAGは回答文こそ得られるものの「その回答文の根拠となる文書を特定することはできない」、また単純なキーワード検索では「質問文に対する文書の検索精度を高めることができない」という点です。

 

回答が複数文書を“蒸留”した文章になるため、どこが根拠なのかが見えなくなるのです。

 

この課題は現場の実感とも一致します。「中堅企業の法人向けRAG導入ガイド2026でも、「RAGの回答精度は、読み込ませるデータの品質に大きく依存します」と述べており、検索の“拾い方”そのものが回答品質を左右することがわかります。

 

さらに「生成AIチャットボット導入後も問い合わせが減らない理由」では、「“回答が意図と違う”という小さなストレスが積み重なると、利用者は離脱し、二度と使わなくなります」と指摘しています。

 

誤回答は単なる技術的欠点ではなく、AIそのものが使われなくなる致命的な要因なのです。

 

 

トリプル検索の3段階を分解する

 

特許の請求項に沿って、3つの検索がそれぞれ何をしているのかを見ていきましょう。前提として、登録された文書は各ページのテキストがチャンクという単位に分割され、チャンクごとに「埋込ベクトル」と「トークン(キーワード)」に変換して保存されています。

 

埋込ベクトル検索 ― 意味の近さで拾う

 

質問文を数値のベクトルに変換し、あらかじめベクトル化しておいた各チャンクとの類似度(コサイン類似度やユークリッド距離)を計算します。

 

類似度の高い順に上位のチャンクを「第1の候補」として取り出します。

 

表現が違っても意味が近い文書を拾えるのが強みで、「値上げ」と「価格改定」のような言い換えにも対応できます。一方で、固有名詞や型番のような“言葉そのもの”の一致は苦手です。

 

 

キーワード検索 ― 言葉の一致で取りこぼしを防ぐ

 

質問文に含まれるキーワードと一致するキーワードを持つチャンクを、一致度の高い順に「第2の候補」として取り出します。

 

ベクトル検索が苦手とする、製品名・型番・専門用語・エラーコードといった厳密な語の一致を確実に押さえる役割です。

 

①と②を併用することで、「意味」と「語」の両面から候補を集められます。

 

 

セマンティックランキング ― 意味的関連度で並べ直す

 

最後に、①の第1候補と②の第2候補をまとめ、質問文に対する意味的な関連度が高い順に並べ替えて、上位のチャンクだけを最終的な検索結果とします。

 

単に候補を足し合わせるのではなく、「本当に質問に答えている箇所はどれか」を改めて評価する“仕上げの選別”が入ることで、量ではなく質で回答根拠を絞り込めます。

 

この3段階の重ね合わせが「トリプル検索」の核心です。

 

 

段階

何をするか

得意なこと

補い合う関係

埋込ベクトル検索

質問とチャンクを意味ベクトル化し類似度で抽出

言い換え・文脈・類義語

が語の一致を補完

キーワード検索

質問の語と一致するチャンクを抽出

固有名詞・型番・専門用語

が意味のズレを補完

セマンティックランキング

①②の候補を意味的関連度で並べ直し上位を選別

的外れ候補の除去・最終精度

①②の“量”を“質”に変換

 

 

 

 

 

「わからないときは、答えない」― 誤回答が起きにくい仕組み

 

トリプル検索がハルシネーション(もっともらしい誤り)に強い理由は、精度の高い絞り込みだけではありません。特許の請求項4には、根拠が不十分なら“無理に答えない”という設計が明記されています。

 

具体的には、検索された最上位チャンクの関連度が所定のしきい値以下だった場合、システムは回答文を生成せず、代わりにユーザーに質問を入力し直してもらうための“問い合わせ文(聞き返し)”を生成して提示します。

 

人間のオペレーターが「恐れ入りますが、もう少し具体的に教えていただけますか」と聞き返すのと同じ発想です。

 

 

ポイント:誤回答を「作らせない」設計
多くのAIは、根拠が薄くても“何か”を答えようとしてハルシネーションを起こします。トリプル検索は、関連度が低い=根拠が足りない状態を検知して回答生成を止め、質問を問い直す。「答えられないことを正しく認識する」ことが、誤回答が起きにくい最大の理由です。

 

 

 

回答の“根拠”を見せる ― ページ画像とハイライト表示

 

特許のもう一つの中核は、回答の根拠を人が目で確認できる点です。

各チャンクには、元のページを画像としてキャプチャしたページ画像と、そのテキストがページ上のどこにあるかを示す座標範囲がメタデータとして紐付けられています。

 

そのため、AIが「東京→大阪は16,000円です」と答えるだけでなく、その数字が書かれた資料のページ画像を表示し、該当箇所をハイライトして示すことができます。

 

利用者は、回答の根拠となった文書を“情報の見た目を保ったまま”確認できるため、「AIの答えは本当に正しいのか」という不安を解消できます。これは、従来のRAGが抱えていた「根拠を特定できない」という課題への直接的な回答です。

 

なお、生成AIによる回答文の作成そのものにも対応しており(請求項3)、質問文と検索チャンクをChatGPT・Claude・Gemini・Llamaなどの生成AIサーバーへ渡して自然な回答文を生成する構成も含まれます。

 

「検索で根拠を固め、生成で言葉にする」——その両輪が1つの特許にまとめられています。

 

 

 

 

 

 

特許情報(基本データ)

 

本記事の一次情報である特許の書誌事項は以下のとおりです(出典:J-PlatPat)。

 

項目

内容

特許番号

特許第7851525号

発明の名称

質問文に対して文書を検索して回答するプログラム、回答装置及び方法

特許権者

デフィデ株式会社(識別番号 500320279)

発明者

山本 哲也

登録日

2026年(令和8年)4月17日

出願番号 / 出願日

特願2025-050858 / 2025年3月26日(特願2025-21995の分割・原出願日2025年2月14日)

優先日

2024年10月10日

国際特許分類(IPC)

G06F 16/338、G06F 16/383(情報検索)

請求項の数

6

 

 

よくある質問(FAQ)

 

Q. トリプル検索と普通のRAGは何が違うのですか?

A. 一般的なRAGはベクトル検索(意味の近さ)だけで根拠を探すことが多いのに対し、トリプル検索はベクトル検索・キーワード検索・セマンティックランキングの3段階を重ねます。加えて、根拠が不十分なときは答えずに聞き返す設計のため、誤回答が起きにくいのが違いです。

 

Q. なぜ誤回答(ハルシネーション)が減るのですか?

A. 3段階で的外れな候補を除去して精度を高めたうえで、最上位候補の関連度がしきい値を下回る場合は回答を生成せず、質問を問い直すからです。「根拠が足りないのに答えてしまう」状態を構造的に避けています。

 

Q. キーワード検索は古い技術では?なぜまだ必要なのですか?

A. ベクトル検索は言い換えに強い一方で、製品名・型番・専門用語といった“語そのものの一致”を取りこぼすことがあります。キーワード検索はそこを確実に押さえる役割で、両者は補完関係にあります。

 

Q. 回答の根拠は確認できますか?

A. できます。特許では、回答の根拠となった文書のページ画像を該当箇所ハイライト付きで表示する仕組みが規定されており、利用者が元資料を目で確認できます。

 

Q. この技術はどの製品で使われていますか?

A. デフィデ株式会社のAIチャット&検索サービス「chai+(チャイプラス)」に実装されています。なお同社は、オペレーターをカスハラから守る「Full Duplex AIボイスボット」でも特許を取得しており、そのボイスボットの回答精度を支える基盤としても、本トリプル検索が活用されています。

 

 

 

 

まとめ

 

トリプル検索(特許第7851525号)は、「意味で拾い(ベクトル検索)」「語で押さえ(キーワード検索)」「関連度で選び直す(セマンティックランキング)」という3段階で、AI検索の“拾い方”そのものを高精度化する技術です。

 

さらに、根拠が足りなければ答えず問い直す設計と、根拠文書をハイライト表示する透明性によって、RAGの弱点だった「もっともらしい誤回答」と「根拠が見えない」という2つの課題に正面から応えています。

 

生成AIチャットボットの導入で「回答精度が上がらない」「誤回答で使われなくなった」と悩む場合、鍵は生成の前段にある“検索の質”にあります。

 

トリプル検索は、その検索の質を特許技術として担保するアプローチだと言えるでしょう。

 

 

出典・参考

 

 

 

 

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