Teamsで社内チャットボットを作る方法は、「Copilot Studioで作る」「Teams用に自社開発する」「Teamsと連携できる専用ツールを使う」の3つである。社内資料がSharePointに整理されていてMicrosoft 365の中で完結させたいならCopilot Studio、PDFやExcelなどの資料がファイルサーバーや各部署に散らばっていて、資料を登録するだけで始めたいなら専用ツールが候補になる。どの方法でも、社員は普段使っているTeamsの画面から質問できる。
本記事では、3つの方法を資料の置き場所・権限・料金体系・必要な体制で比較し、自社に合う方法の選び方と、導入前に情報システム部門と確認しておきたい点を整理する。Microsoftの製品に関する記述は、2026年10月時点でMicrosoftの公式ドキュメントに書かれている内容にもとづいている。どの問い合わせをAIに任せるか、効果をどう測るかは「社内問い合わせを減らす方法」で解説している。
社内チャットボットが使われなくなる大きな理由の一つは、質問するために別の画面を開く手間である。社員が毎日開いているTeamsの中に質問窓口があれば、同僚にチャットで聞くのと同じ感覚でボットに聞ける。Microsoftも、Copilot Studioで作ったエージェントを「ユーザーがすでに活動しているチャネル」に公開できるとし、その代表としてTeamsを挙げている(Copilot Studioの概要)。
ただし、Teamsはあくまで「質問の入口」である。回答の正しさを決めるのは、ボットが参照する社内資料と、その資料を検索して答える仕組みのほうだ。そのため、作り方を選ぶときは「Teamsに出せるか」よりも「どの資料を、どの仕組みで参照するか」を先に考える必要がある。
| 比較項目 | Copilot Studio | Teams用に自社開発 | Teams連携できる専用ツール |
|---|---|---|---|
| 作り方 | Microsoftのローコードのスタジオでエージェントを作り、Teamsに公開する | Microsoftの開発者向けの仕組みを使い、ボットアプリを開発する | 完成したサービスに資料を登録し、Teamsとの連携を設定する |
| 参照できる資料 | SharePoint、アップロードしたファイル、公開Webサイト、Dataverse、コネクタ経由の社内データなど | 開発次第 | 製品ごとに異なる(ファイルのアップロード、URLの登録など) |
| 必要な体制 | 作成者と、Power Platform・Teamsの管理者の協力 | 開発者(社内または外注)と保守の担当 | 資料を管理する担当者と、Teamsの管理者 |
| 料金の考え方 | ライセンスと、利用量に応じて消費する「Copilotクレジット」 | 開発費、クラウドの利用料、保守費 | 製品の月額料金(Teams連携が使えるプランかを確認) |
| Teams以外の窓口 | Microsoft Copilot、Webサイト、モバイルアプリなど | 開発次第 | 製品ごとに異なる(LINE、Slackなど) |
| 向いている企業 | 資料がSharePointに整理されていて、Microsoft 365の中で完結させたい | 業務システムと深く連携した独自の処理が必要で、開発体制がある | 資料が散らばっていて、専任の開発者なしで資料を登録するだけで始めたい |
RAG(社内資料を検索して答える生成AI)そのものを、SaaS・クラウド開発・オープンソースのどれで作るかという比較は「RAG構築の方法は3つ」で解説している。本記事では、その中でもTeamsを窓口にする場合に確認したい点に絞る。
Copilot Studioは、AIのエージェントやワークフローを作って管理するための、Microsoftのローコードのツールである。作ったエージェントは、Teams、Microsoft Copilot、Webサイトなどに公開できる。
回答の根拠にする「ナレッジソース」として、公開Webサイト、アップロードしたドキュメント、SharePoint、Dataverse、Microsoft Searchでインデックスされたコネクタ経由の社内データなどを追加できる(ナレッジソースの概要)。
社内チャットボットで特に重要なのが権限の扱いである。SharePointをナレッジソースにすると、エージェントは質問したユーザーがアクセス権を持つ内容だけを表示し、権限がない場合は「応答なし」と返す。一方で、暗号化を伴う秘密度ラベルやパスワード保護がかかったファイルからは情報を取り出せないとされている(SharePointをナレッジソースとして追加する)。重要な規程ほど保護がかかっていることも多いので、参照させたい資料の保護設定は事前に確認しておきたい。
Microsoftの手順では、エージェントを少なくとも1回公開したうえで、「TeamsとMicrosoft Copilot」のチャネルに接続する。社員に届ける方法としては、インストール用のリンクを共有する、Teamsのアプリストアに表示する、管理者の承認を得て「組織用に構築」の欄に掲載する、チームのチャネルに追加する、などがある(Teams とMicrosoft 365のエージェントを接続して構成する)。
組織がPower PlatformのアプリをTeamsに追加することを許可していない場合は、Teamsにエージェントを直接インストールできない。その場合はTeams管理センターでの設定を管理者に依頼する必要がある。
Copilot Studioでは「Copilotクレジット」が機能全体で共通の通貨とされ、従量課金や事前購入のプランなどで取得する。作成者が使い始めるには、Copilot Studioのユーザーライセンス、Microsoft 365 Copilotのライセンス、試用ライセンスなどの構成が必要になる(ライセンスの取得)。利用量によって費用が変わるため、Microsoftが案内しているライセンスガイドと利用量の見積もりツールで、自社の想定利用量をもとに試算しておく。
Teamsのボットは、Microsoftが開発者向けに公開している仕組みを使って、自社でアプリとして開発することもできる(Microsoft Teams開発者向けドキュメント)。
基幹システムへの照会や申請の受付など、独自の処理をボットに組み込みたい場合には自由度が高い。一方で、資料を検索して回答する仕組み(RAG)、資料の登録・更新の画面、利用ログ、障害対応まで自社で用意し続ける必要がある。開発体制だけでなく、公開後に誰が保守するかまで決められる場合の選択肢である。
社内資料を検索して答えるサービス(法人向けRAG)の中には、Teamsとの連携に対応しているものがある。資料の取り込み、検索、回答、利用ログの確認といった仕組みはサービス側にそろっているため、担当者は資料を登録・更新するだけで運用できる。
次の質問に上から答えていくと、検討すべき方法が絞り込める。
| 質問 | 「はい」の場合に検討する方法 |
|---|---|
| 1. 基幹システムへの照会や申請の受付など、独自の処理をボットに組み込む必要があり、開発と保守の体制がある | 自社開発 |
| 2. 答えの根拠になる資料が、ほぼSharePointに整理されている | Copilot Studio |
| 3. すでにMicrosoft 365 CopilotやCopilot Studioのライセンスを持っている | Copilot Studio |
| 4. 資料がファイルサーバーや各部署に散らばっていて、PDFやExcel、図表の多い資料が中心 | 専用ツール |
| 5. Teamsだけでなく、LINEなど社外の窓口や他のチャットツールでも同じ資料で答えたい | 専用ツール(対応する窓口を確認する) |
迷う場合は、問い合わせの多い一部門の資料で、候補の方法を実際に試して比べるのが確実である。同じテスト質問に対する回答の正しさを比べる方法は「回答精度が低い原因と改善方法」で紹介している。
Teamsにボットを置く場合、どの方法でもTeamsの管理者との調整が必要になる。総務や人事が主導する場合も、次の点は早めに情報システム部門と確認しておく。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| アプリの追加の許可 | 社内でTeamsに外部のアプリやPower Platformのアプリを追加できる設定になっているか。公開に管理者の承認が必要か |
| 配布の範囲 | 全社に公開するか、特定の部署やチームから始めるか |
| データの流れ | 質問や回答の内容がどこに保存され、どこで処理されるか。社内の規程で許される範囲か |
| 資料の権限 | 部門外に見せたくない資料を、誰が参照できるようにするか |
| 認証 | 社員だけが使えるように、どの認証方式で利用者を確認するか |
データの流れについては、Microsoftも、Copilot StudioのエージェントをTeamsに追加すると、エージェントの内容やユーザーとのチャット内容などの一部のデータがTeamsと共有され、組織のコンプライアンスや地理的な境界の外に出る可能性があると注意を促している(前述の公開手順のページ)。どの方法を選ぶ場合も、データの扱いは各サービスの公開情報で確認したい。
chai+は、デフィデ株式会社が提供する法人向けのRAGで、方法3の専用ツールにあたる。MS Teams、LINE、Slack、Chatwork、LINE WORKSなどから質問できる。Teamsとの連携(Teams配信先設定)は、料金プランのProfessional版以上で利用できる(2026年10月時点)。
データは、AWSの日本国内リージョンのみに保存され、AIモデルの学習には利用されない。ただし、外部の生成AIエンジンをAPI経由で使うため、推論処理の際にはデータが一時的に米国などの海外サーバーへ送信される(推論目的のみに使われ、学習や二次利用はされない)。詳しくはchai+のセキュリティ・トラストページで公開している。
建設・不動産の業種では、Teamsを活用した社内外のヘルプデスクの効率化にchai+が使われている。問い合わせ614件のうち563件にAIが回答し、回答率は92%だった(社外からの問い合わせも含む件数)。詳しくは「建設・不動産のAIチャットボット導入事例」で紹介している。
Teamsで社内チャットボットを作る方法は、Copilot Studio、自社開発、Teams連携できる専用ツールの3つである。社員にとっての使い勝手はどれもTeamsの画面から質問するだけで変わらないが、参照できる資料、権限の扱い、料金の考え方、必要な体制は大きく違う。資料がSharePointに整理されていればCopilot Studio、独自の処理が必要で開発体制があれば自社開発、資料が散らばっていて登録するだけで始めたいなら専用ツールが候補になる。
どの方法でも、Teamsの管理者との調整と、データの扱いの確認は欠かせない。chai+の機能と導入の流れは、資料ダウンロードページから確認できる。
A. 主に3つあります。MicrosoftのCopilot Studioで作ってTeamsに公開する方法、Teams用のボットアプリを自社で開発する方法、Teamsと連携できる専用ツールに資料を登録して使う方法です。答えの根拠になる資料がどこにあるかと、開発の体制があるかで選びます。
A. Microsoftの手順では、エージェントを少なくとも1回公開したうえで、「TeamsとMicrosoft Copilot」のチャネルに接続します。社員への配布は、インストール用リンクの共有や、管理者の承認を得て組織のアプリストアに掲載する方法などがあります。組織がPower PlatformのアプリをTeamsに追加することを許可していない場合は、管理者による設定が必要です。
A. Copilot Studioでは、機能全体で共通の通貨である「Copilotクレジット」を、従量課金や事前購入のプランなどで取得します。利用量によって費用が変わるため、Microsoftのライセンスガイドと利用量の見積もりツールで試算してください。
A. Microsoftの説明では、SharePointをナレッジソースにした場合、エージェントは質問したユーザーがアクセス権を持つ内容だけを表示し、権限がない場合は「応答なし」と返します。なお、暗号化を伴う秘密度ラベルやパスワード保護がかかったファイルからは情報を取り出せません。
A. 使えます。Teamsとの連携は料金プランのProfessional版以上で利用できます(2026年10月時点)。Teamsのほか、LINE、Slack、Chatwork、LINE WORKSなどからも質問できます。建設・不動産の業種では、Teamsを使った社内外のヘルプデスクで、問い合わせ614件のうち563件(92%)にAIが回答しました。
A. 使うサービスによって異なるため、各サービスの公開情報で確認が必要です。Microsoftは、Copilot StudioのエージェントをTeamsに追加すると一部のデータがTeamsと共有され、組織のコンプライアンスや地理的な境界の外に出る可能性があると案内しています。chai+の場合、データはAWSの日本国内リージョンのみに保存されますが、推論処理の際には一時的に海外サーバーへ送信されます。
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