LLMはどのように“考える”のか? NVIDIAが解き明かす、生成AIの「推論プロセス」とTime Scalingの秘密

 なぜ今、LLMの“思考プロセス”を理解する必要があるのか?

 ChatGPT、Claude、Gemini──生成AIの進化は目覚ましいものがあります。しかし、多くの人はその背後にある“仕組み”を知らずに使っているのが現状です。

 

 生成AIの出力が「瞬時に魔法のように現れる」と感じるのは表面的な印象にすぎません。

 

 NVIDIAが公式ブログで公開した「An Easy Introduction to LLM Reasoning, Inference, and Token-Level Computation Through the Lens of Time Scaling」では、生成AIの内部で何が起きているのか?を、極めて分かりやすく解説しています。

An Easy Introduction to LLM Reasoning, AI Agents, and Test Time Scaling | NVIDIA Technical Blog

 

 


 

時間の中で展開される“思考”──Time Scalingとは?

 モデルは1つのトークン(単語や記号)を予測し、次のトークンを生み出すたびに、少しずつ“考え”を進めていきます。これをNVIDIATime Scaling(時間スケーリング)と呼び、複雑な問題ほどより長く考える──つまり多くのトークンを生成しながら、より構造的な推論をしているといいます。

 

この理解は、以下のような実践に直結します。

 

・プロンプト設計を改善し、段階的な思考を促す

Chain-of-Thought(段階的推論)の活用で、回答精度を高める(Wei et al., 2022

 https://arxiv.org/abs/2201.11903

・モデルが「なぜ間違えたのか」を出力プロセスから逆算して分析する

 

 

LLMはどうやって推論しているのか?

 

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 LLMの本質は、巨大なニューラルネットワークによる関数近似です。つまり、「この入力に対して、もっともらしい次の出力は何か?」を、膨大な過去データとパラメータを用いて計算しています。

 

 ただし、重要なのは、この計算がトークン単位で順次実行されている点です。まるでAIが「仮説 → 推論 → 修正 → 結論」といった思考を、小さな単位で繰り返しているかのようです。

 この観点から見ると、AIが出す長文の回答は単なるアウトプットの集合ではなく、「プロセスそのもの」だということが分かります。

 

 

AIに“考える時間”を与えるプロンプト設計へ

 OpenAIGoogle DeepMindAnthropicなど多くの研究者は、近年「AIは構造的なプロンプトでより良く思考する」ことを明らかにしています。

 

Chain-of-Thought Prompting:段階的に考えさせることで推論力が向上

https://arxiv.org/abs/2201.11903

Self-Consistency:複数の思考パスを生成し、最も整合的なものを選ぶ

https://arxiv.org/abs/2203.11171

 

 これらの研究は、「AIの出力=結論」ではなく、「AIの出力=思考の過程」とみなすべきであることを示しています。

 

 

LLMと向き合う新しい姿勢


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 NVIDIAの記事は、以下のような洞察を私たちに与えてくれます。この視点は、ビジネス、研究、教育における生成AIの使い方を根底から変える可能性を持っています。

 

LLMは思考プロセスのシミュレーションマシンである

出力の意味は「結論」ではなく「思考の軌跡」である

複雑な問いには、それにふさわしい“時間”と“誘導”が必要である

 

 


 

 

生成AIを“思考のプロセス”として活かすために:chai+の活用

 デフィデ株式会社が提供するRAGベースのAIナレッジ活用プラットフォーム「chai+」は、まさにこのTime Scalingの考えを実装現場で活かすツールです。chai+では、AIボットごとに特徴付ける事が可能で、以下のような機能を実現することをめざしています。

 

・社内ドキュメントやPDFWordファイルをベースにRAGで的確な回答を生成

・タスク単位で情報を段階的に抽出・整理し、AIエージェントが仮説→検証→判断をサポート

・プロンプトテンプレートによって、Chain-of-ThoughtSelf-Consistencyを誰でも使いやすく実装

 

例えばこれらを踏まえると、法務、営業、カスタマーサポート、開発など、各部門で業務の正確性と効率を飛躍的に高めることができます。

 

実践TipsTime Scaling的プロンプト例

悪い例:「この問題の答えを教えて」

良い例:「まず問題を理解し、次にどんな情報が必要かを考え、最後に計算をして答えてください」

 

このように、思考のフローをあえて指定することで、モデルはその構造に従ってトークンを出力し、精度が向上します。

 

 

AIコンサルティング・エージェント開発もサポート

chai+RAGソリューションだけでなく、生成AIを活用した業務改革、AIエージェントによる業務自動化のPoC設計・開発も支援します。 

・社内FAQAIで自動応答

・見積書や提案書の下書きをAIが自動生成

・契約チェックや業界ニュース要約などをエージェントが日常化

 

 


 

まとめ

 AIは「魔法」ではなく、「思考を模倣する存在」です。プロンプト、文脈、情報構造──これらを人間が適切に設計することで、生成AIは最大限の力を発揮します。

  デフィデ株式会社では、AI導入を検討する企業に向けて、技術解説から業務実装まで一気通貫で支援します。chai+を使って、あなたの組織にも“考えるAI”を。

 

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