経理の属人化を解消するには、手順だけでなく、担当者が申請や伝票を見るときの「確認の観点」を言葉にして共有することが欠かせない。経理の属人化は、「この経費は通してよいか」「この例外はどう扱うか」という判断が、特定の担当者の頭の中にあることから起きやすい。確認の観点を聞き取って書き出し、社内規程とあわせて生成AIに設定すれば、申請者が提出前に足りない点を確かめたり、社内からの問い合わせに答えたりできる。承認や最終的な判断は、これまでどおり人が行う。
本記事では、経理で属人化しやすい業務、属人化で起きること、確認の観点を言葉にする手順、AIに任せることと人が判断することの線引き、生成AIでの支え方を解説する。税務や会計の制度の内容には触れず、社内での確認と問い合わせ対応の進め方に絞る。
経理の業務には手順書がそろっていることが多いが、手順書に書かれていない「確認の観点」や「例外の扱い」が属人化しやすい。
| 業務 | 属人化しやすいところ |
|---|---|
| 経費精算の確認 | どの申請を差し戻すか、どこまでの説明で認めるか |
| 勘定科目の判断 | 迷いやすい取引を、社内でどう処理してきたか |
| 支払い・請求の例外対応 | 期日の変更、金額の相違、取引先ごとの取り決めの扱い |
| 月次の締めの確認 | どの数字に違和感を持ち、どこを確かめるか |
| 社内からの問い合わせ | 規程のどこを見ればよいか、例外を認めた過去の事例 |
確認の観点が一人の担当者にしかないと、その人の不在や繁忙期に確認が止まる。申請者は何を見られるかを知らないまま提出するため、差し戻しがくり返され、同じ質問が担当者に集まる。担当者が替わると確認の基準が変わり、「前は通った」という不満も生まれやすい。異動や退職のときには、規程に書かれていない判断の理由ごと失われる。
差し戻しや問い合わせが多い業務を1つ選ぶ。件数が多く、申請者が社内に広くいる経費精算は、最初の対象にしやすい。
差し戻したときのコメントや、社内から届いた質問を数か月分集める。何度も出てくる指摘や質問が、担当者が見ている観点の手がかりになる。
集めた事例を見ながら、「なぜ差し戻したのか」「どうなっていれば通したのか」「迷ったときは誰に確認したのか」を担当者に聞く。一般論ではなく、具体的な申請を題材にすると言葉にしやすい。
聞き取った内容を、「役割」「確認する順番」「必ず聞くこと」「人に引き継ぐとき」に分けて短く書く。規程のどの条文にもとづく観点なのかも、あわせて書いておく。
役割:経費精算の申請前の確認を支援する、承認はしない。確認する順番:規程の対象か、証憑がそろっているか、金額と目的が合っているか。必ず聞くこと:誰と、何の目的で使ったか。人に引き継ぐとき:規程にない費目、上限を超える金額。 判断軸シート:経費精算(架空の例) 役割 申請前の確認を支援する。承認はしない 確認する順番 規程の対象か → 証憑 → 金額と目的 必ず聞くこと 誰と、何の目的で使ったか 人に引き継ぐとき 規程にない費目、上限を超える金額 図1:経費精算の確認の判断軸シート(架空の例)
書き出した観点を過去の申請に当てはめ、担当者の実際の判断と食い違うところを探す。食い違いがあれば、言葉にし切れていない観点がある。担当者に読んでもらい、足りない点を直してもらう。
| AIに任せること | 人が判断すること |
|---|---|
| 規程の該当箇所の案内 | 申請の承認・差し戻しの決定 |
| 提出前に、足りない情報や添付の確認をうながす | 規程にない例外の扱い |
| 確認の観点に照らした指摘の案 | 税務・会計の処理の判断 |
| よくある質問への回答と、担当者への案内 | 不正の疑いがある申請への対応 |
AIは、申請者と担当者の「確認の手前」を支える役割にとどめる。AIの指摘があっても、承認したように扱わないことを社内で共有しておく。社内規程の問い合わせ全般をAIで減らす方法は「社内問い合わせを減らす方法」で解説している。
chai+ AIエキスパートは、専門家の判断の軸に照らして、社員の相談や資料のレビューに答える生成AIである。判断の観点と参照する資料を整えれば、部門ごとにAIエキスパートを置ける。公式ページでは、次のように案内している。
経理での使い方としては、経費精算の判断軸と社内規程を設定し、申請者が提出前に「足りない点はないか」をAIエキスパートに確かめる形が考えられる。判断の軸を言葉にする考え方は「社内の判断基準を生成AIに反映するには?」でも解説している。
経理の属人化は、手順よりも、申請や伝票を見るときの確認の観点と例外の扱いが特定の担当者の頭の中にあることから起きやすい。対象の業務を1つに絞り、過去の差し戻しと問い合わせを集め、担当者に判断の理由を聞き取り、判断軸シートに書き出して、過去の申請で試して直す。言葉にした観点を社内規程とあわせて生成AIに設定すれば、申請者の提出前の確認と社内の問い合わせ対応を支えられる。承認や例外・税務の判断は人が行う。
A. 手順書だけでなく、担当者が申請や伝票を見るときの確認の観点を言葉にして共有します。差し戻しや問い合わせの多い業務を1つ選び、過去の事例をもとに担当者から判断の理由を聞き取り、確認する順番・必ず聞くこと・人に引き継ぐときに分けて書き出します。
A. 経費精算の確認、迷いやすい取引の勘定科目の判断、支払い・請求の例外対応、月次の締めの確認、社内からの問い合わせ対応などです。手順そのものより、どこまで認めるか、例外をどう扱うかという判断が属人化しやすい部分です。
A. 承認や例外の判断、税務・会計の処理の判断はAIに任せず、人が行います。AIに任せるのは、規程の該当箇所の案内や、提出前に足りない情報の確認をうながすことなど、確認の手前の部分にとどめます。
A. 過去の差し戻しのコメントを集め、何度も出てくる指摘を確認の観点として書き出します。その観点を申請者が提出前に確かめられるようにすると、差し戻しと問い合わせの両方を減らしやすくなります。
A. 対象の業務を1つに絞れば、1回の聞き取りで要点を洗い出せることが多いです。chai+ AIエキスパートでは、専門家への聞き取りを60〜90分ほどとし、くり返し受ける相談と、そのときに見ている点を洗い出します。
A. 使うサービスによって扱いが異なるため、導入前に確認が必要です。chai+では、登録した資料や入力データはAIモデルの学習に利用されません。個人情報を含む申請内容を扱う場合は、社内のルールで入力してよい範囲も決めておきます。
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提供:デフィデ株式会社|戦略AIコンサルティング